夜、仕事を終えてソファに座り、中国ドラマの続きを再生する。
画面に男の人が映る。誰だったか、思い出せない。
たしか主人公の味方。いや、二話前に裏切った人かもしれない。
顔は見覚えがある。
ただ、見覚えがある人が多すぎる。
50代で中国ドラマにハマって、最初にぶつかった壁は内容ではなかった。
名前である。
🎭 中国ドラマは、まず名前が覚えられない
先に白状すると、私はメインキャラしか名前を覚えていない。それも、かなり怪しい覚え方で。
主人公は分かる。でもその周辺から急に怪しい
『慶余年2』を見ていた頃、主人公の名前は言えた。范閑(ファン・シエン)。ただし私の脳内では「ファンシェン」だった。正式表記と、微妙に違う。
脇を固める人たちになると、さらに雑になる。言氷雲(イエン・ビンユン)は、私の中では「イエンビン」。省略した分は、脳が勝手に捨てている。
カタカナの名前は、雰囲気で覚えるしかない。そして雰囲気は、だいたい正確ではない。
衣装が似ていると、もう全員親戚に見える
時代劇は特に手ごわい。似た髪型で、似た色の衣装で、同じ宮殿の中にいる。
偉い人が三人並んだ場面で、誰が誰の父なのか分からなくなる。
しかも時代劇は、親族関係も師弟関係も入り組んでいる。こちらの脳内では、もう全員どこかで血がつながっている。
私は途中で相関図を開くようになった
名前があやふやなまま話が進むと、陰謀のダメージが半減する。誰が誰を陥れたのか分からない陰謀は、ただの騒ぎである。
だから今は、途中で止めて、Googleで「作品名 相関図」と検索する。
『逐玉: 翡翠の君』でも開いた。開きながら見るのが、もう普通になった。
🔍 相関図を見ながらでも、ちゃんと楽しい
相関図には、便利さと危険が同居している。関係が分かる代わりに、先の展開まで見えてしまうことがある。
ネタバレを踏まないように薄目で見る
相関図のページを開く瞬間が、いちばん緊張する。
知りたいのは「この人は誰の部下か」だけなのに、図の下の方に、実は黒幕みたいな気配が漂っていることがある。
相関図を開いて、必要なところだけ確認して、すぐ閉じる。もはや、ネタバレ回避の反射神経である。
名前より、顔と立場で覚える
相関図で確認しても、名前だけはなぜか居座ってくれない。
残るのは顔と立場だけ。主人公の右腕。敵側の切れ者。たまに出てくる偉いおじいさん。
私の脳内の相関図は、役職名でできている。会社の組織図と同じ覚え方である。
「この人、前に裏切った人?」と何度も確認する
それでも分からなくなると、気づけば同じ確認をしている。「この人、前に裏切った人?」
画面は答えてくれない。だからまた止めて、薄目の相関図に戻る。
話はなかなか進まない。でも、疑いながら見るのも、それはそれで楽しい。
🌙 50代の夜に、中国ドラマがちょうどよかった
覚えられないのに、なぜ見続けているのか。理由は単純で、夜がちょっと楽しみになったからだ。
仕事終わりに、別世界へ逃げられる
昼間は数字と締切の世界にいる。夜、再生ボタンを押すと、宮廷の陰謀の世界に切り替わる。
どちらも人間関係は複雑だが、向こうの争いは私の責任ではない。これが、思いのほか休まる。
ハマったドラマが長いと、毎日の楽しみが続く
中国ドラマは長い。数十話ある作品も多い。
最初は「長いな」と思っていた。
でも、1話目でハマったドラマに限っては、長い方がうれしい。
すぐ終わる短いドラマだと、少し物足りない。
明日も続きがある。明後日もまだある。
そう思えることが、中国ドラマのいいところだと思っている。
『慶余年2』も、1の続きが来るのをずっと楽しみに待っていた。今は、いつかまた続きを見られたらいいなと思っている。
夜に小さな楽しみが残っているだけで、次の日の気分が少し違う。
覚えられなくても、楽しめたら勝ち
名前を全部覚えてから楽しもうとしていたら、たぶん一話で挫折していた。
覚えられないまま、相関図を薄目で開きながら、それでも夜が楽しい。
名前は、だいたいの雰囲気で覚えている。
それで十分だと、50代になってから思えるようになった。
中国ドラマにハマった最初の頃の話は、こちらにも書いています。
▶ 「1話だけ」のつもりだった。中国ドラマ沼に落ちた50代の話
🍵 まとめ|名前は覚えられない。でも夜は少し楽しくなった
今夜もソファに座って、続きを再生する。
知らない顔が出てきたら、また止めて、薄目で相関図を開く。
名前は明日には忘れている。でも、この夜が楽しかったことは、覚えている。



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