帰ってきて、うちのドアの前まで来たら、犬の声がした。
わんわん、わんわん。
かなりの大きさだった。
近所迷惑という言葉より先に、へえ、と思った。
ジョイは吠えない子だ。
ピンポンと、年に一度の消防署の点検。
うちでジョイが吠えるのはその二回だけで、抱っこして窓の外を見せても、うぉぉん、と小声で何か言うくらいで終わる。
そのドアの向こうで、わんわん言っている。
🏠 うちに、誰もいない時間ができた
家には、だいたい誰かがいる暮らしだった。
私はリモートの仕事だし、少しの留守番はあっても、長い時間ひとりにすることはほとんどなかった。
それが少しずつ変わって、いつもより長い留守番が数回あった。
そのうちの一日、帰ったら粗相があった。
粗相そのものは、初めてではない。
年に一度あるかないか、くらいの頻度で、数年前にもあった。
だからそれ単体なら「まあ、たまにはあるな」で終わっていたと思う。
ただ、玄関の外で聞いたあの声と、その日の粗相が、頭のなかでつながってしまった。
私がいない部屋で、この子は何をしているんだろう。
📷 3,090円のペットカメラを買った
TP-LinkのTapo C210/A。
注文履歴を見ると2024年7月17日、3,090円だった。
ペットカメラというより、普通の見守りカメラだ。
高いものを買う気はなかった。
というより、何が見たいのかも自分でよくわかっていなかった。
とりあえず映ればいい、くらいの気持ちだったと思う。
結論から言うと、3,000円台で十分だった。
置いたのはリビングだ。
うちは留守番のときもケージに入れず、部屋のなかは自由にしている。
とはいえジョイはたいていリビングにいるので、そこに一台置けば、だいたいの時間は映る。
画角がどうこうと悩むほどの家の広さでもない。

▶ 犬の滑り対策にタイルカーペット100枚|48,961円かけて分かった誤算
写真に写っている床は、このとき貼り替えたタイルカーペットです。
🐩 遠吠えしない子だと思っていた
設置して、食事に出た。
気になって仕方ないから、見てしまう。
食事の途中で何度もスマホを開く。
ご飯を食べに来たのか、犬を見に来たのかわからない。
画面のなかのジョイは、吠えていた。
見ているあいだ、ずっとだ。
わん、わん、わん。
うぉーーーん。
箸が止まった。
え。
ジョイ、遠吠えするの。
動画で、救急車のサイレンに合わせて上手に遠吠えする犬をよく見る。
かわいい。
うちの子にもやってほしくて、何度も教えた。
私が先に「うぉーーーん」と本気でやってみせて、「ほら、真似して?」と誘う。
ジョイは「……。」という顔で、私を見るだけだった。
一度もやらない。
結局、遠吠えを練習していたのは、ジョイではなく私だった。
やらない子なんだ、とこちらが納得していた。
その子が、誰もいない部屋で、ひとりでやっていた。
私が知らなかっただけだった。
💭 知れてよかった。それが私の本音です
ペットカメラについて調べていたとき、「見なきゃよかった」という体験談も見かけた。
留守番中に鳴いている姿を見てしまって辛くなった、すぐ帰りたくなった、と。
私は、「見なきゃよかった」とは思わなかった。
ただ、早めに帰ろうとは思った。
もちろん、いい気分ではない。
でも、玄関の外に漏れていた声も、あの日の粗相も、留守番中に起きていた。
原因が同じかどうかは、私には分かりません。
ただ、別々に気になっていたことを、留守番中の出来事として見られるようになりました。
知らないままだったら、私はただ「最近ちょっと変だな」と思い続けていた。
知って楽になったわけではない。
ただ、事実を知れたことのほうが、私には大きかった。
📺 テレビも、こっそり出るのも、効かなかった
わかったからには、と、いくつか試した。
テレビをつけて出る
音があれば気が紛れるのでは、と思ってつけっぱなしにしてみた。
結果、吠えているのは変わらない。
テレビの音がしていようがいまいが、ジョイには関係なかったらしい。
気配を消して出る
出かけるよ、という空気を出さずに、静かに支度をして出る作戦。
これも失敗した。
着替えている時点でバレている。
部屋着から外の服に替わる、あの瞬間でもう察している。
私の演技力の問題ではないと思う。
出かける前に散歩に行く
これは対策として始めたというより、もともと私が出かけるときのパターンが「散歩のあと」なので、その順番を守っているだけだ。
歩いて、満足して、それから留守番。
効いているかどうかは、正直わからない。
知育玩具は、まだ買っていない
ちょっと食事に出るくらいのとき、気が紛れるものがあればいいのかな、と思って探している。
シニアなので、頭を使うことをさせておくのもいいかもしれない、という気持ちもある。
ただ、まだ買っていない。
ここは今も宿題のままだ。
🔧 3,090円のカメラで、実際に使った機能
細かいスペックはメーカーの公式サイトに載っているので、ここでは私が実際に使った機能だけ書く。
使ったのは、たった三つだった。
話しかけられる
カメラ越しに、こちらの声を届けられる。
吠えているジョイに、一度話しかけてみた。
一瞬、止まったように見えた。
お? 聞こえた?
と思ったら、また普通に吠え始めた。
名前を呼べば静かになる、というものではない。
ただ、声は届いているらしい。
動きを検知すると通知が来る
使うときは、この機能をオンにしていた。
友達も同じTapoを、猫で使っている。
一緒にいるときに画面を見せてもらったら、ご飯の時間帯はかなりの数の通知が並んでいた。
今も定期的に一緒にのぞいている。
犬でも猫でも、通知は思った以上に正直だ。
思ったより、ちゃんと見える
3,000円台だったので、正直そこまで期待していなかった。
でも実際は、リビング全体が十分見えた。
うぉーん、と遠吠えしているジョイも、部屋の様子も、ちゃんと確認できた。
私が知りたかったのは、表情のアップではない。
何をしているかがわかれば十分だ。
その意味では、この画質で困ることはなかった。
ちなみに、うちは留守番のときも部屋の電気をつけたままなので、暗視機能は一度も使っていない。
📦 2年たった今、ほとんど使っていない
正直に書くと、今このカメラの出番はほとんどない。
私は在宅の仕事なので、長い時間家を空けること自体が少ない。
2、3時間の外食くらいなら、もうつけていない。
実家に帰るようなときは、ジョイを連れて行く。
つまり、留守番の時間そのものが減った。
カメラが解決したわけではなく、生活のほうが変わった。
✅ それでも、ペットカメラは必要かと聞かれたら
必要だった、と答える。
ただし「安心のために毎日見るもの」ではなくて、「一度、事実を確かめるためのもの」として。
うちの場合、確かめたいことは最初の数回でだいたいわかってしまった。
そのあとは、わかったうえでどうするかの話になる。
だから今使っていないことを、私はもったいないとは思っていない。
3,090円で知ったのは、ペットカメラの便利さではなかった。
11年一緒に暮らしていても、見えていない時間があるということだった。
もし今、自分の家のドアの外で犬の声を聞いてしまった人がいたら、まず一度見てみることをおすすめします。
見たあとに何をするかは、それから考えればいい。
散歩から帰って、抱っこして窓の外を見せると、ジョイはうぉぉん、と小さく言う。
その気になれば出せるんじゃないの、と思うけれど、ジョイはこちらを見て、それ以上は言わない。



コメント